「昔の人はね『ひぃ、ふぅ、みぃ…ここのつ、とぉ』って数えたものなのよ」と小さい頃、祖母に教えてもらった。
成人を迎えても、祖母は私に言っていた。
そして必ず決まって最後に
「『ひ』から始まって積み上げていって『と』で終わるでしょ」
「『人』はね、色々な物を積み上げて『人』になるものなの」
「楽しい事も悲しい事も全部、『人』になる為に大切な事なのよ」
と教えてくれた。
お釈迦様のお言葉の中に
「諸仏の所において 大願を成就して 衆生を愍れむが故に人間に生ずるなり」(妙法蓮華経法師品第十)とある。
苦しい事も悲しい事も乗り越えて、更には衆生(生きとし生けるもの)を愍(あわ)れんで人間として生を受けるのであると御教示下さっている。
人は苦しい事も悲しい事も一つ一つ積み上げて、人となっていく。
「決して無駄な事は何一つないのよ…」と、法華経を通じて懐かしき祖母の声が心に響いた。